「1984」ではなく「1Q84」、伊坂作品の映像化。

伊坂光太郎「ラッシュライフ」を読んだ後で、
村上春樹の「1Q84」を読んでいる。
前者は5つに分岐し、その中の一つで新興宗教みたいなものが出てくる。
後者は「世界の終りとハードボイルドワンダーランド」のような2つの分岐で
書かれていて、今回はその分岐のリンクが意外とはっきり出てくる。
村上作品のなかでも読みやすい部類の作品だ。
ただ心理描写の比喩が独特な上(明確ではあるのだが)、
全1050ページの大作なので、心して読んで欲しい。
ねじまき鳥クロニクル」よりは量は少ないけど。
それに今回の作品は「アンダーグラウンド」の取材をして得た内容だろう
と思える部分が出てきます。
僕もまだ半分しか読んでないので、特に話すことはないのだけれど、
「よくもまぁ、いきなりレズシーンがある作品がこうも売れるかね」
なんて思ってしまった自分がいました。
今回の作品はかなり「ノルウェイの森」に近い描写がありますよ。


前者の「ラッシュライフ」は映画にはしない方がいいと思います。
はっきり言って「重力ピエロ」しかり「アヒルと鴨のコインロッカー」も
映像化してほしくなかった作品です。まだ「チルドレン」ならいいかもしれないけれど。
小説というものは想像力をもたないと読めないものです。
かっこいい男性の表紙や横書きみたいなものを作ってもいいですが、
映像化するのは、「読者に対してのマナー違反」のように思えるのです。
「フィッシュストーリー」にしろ、「魔王」にしろ、伊坂氏も許諾しすぎだと思ってしまいます。
ノルウェイの森」も映像化ですか?18禁ですね。
よく女優が好きな小説に「ノルウェイの森」を挙げているのを見かけて、
「こいつはド変態なんだな」と思ったことがあります。


邦画の可能性を僕は信じているがゆえに、小説が大好きなことがゆえに、
映画の脚本家の想像力のなさに情けなくなってしまうのです。
「じゃあ、黒澤明羅生門は小説の映像化ではないか」と言われるに決まっています。
「むしろ、小説の羅生門を読んだ時、ああいう風に映像化すると思ったか?」
と言いたいです。
以前劇団にいたときにとある団員がマンガの脚本化を考えてきたときがありました。
それは僕も似たような経験がありました。手塚治虫の短編を脚本化する考えでした。
だからこそ、その脚本化には大反対しました。
そういうことができるのはその原作を超えるような脚本を書くぐらいの度量がないと
申し訳ないからだと思ったからです。
黒澤明芥川龍之介と肩を並べる表現ができるからそうしたのです。
ですから世界に認められているのです。


マチュアがどういったって始まらないですが、僕は何となくそう思っています。

1Q84 BOOK 1

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ラッシュライフ (新潮文庫)

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