使命

僕はかくれんぼの鬼になる。
誰も「もういいよ」なんて言わないかくれんぼ。
僕の必死の「もういいかい?」に対して、
機械的な「まあだだよ」が聞こえる。
何度問いかけても、「もういいよ」は聞こえてこない。
ただただ平坦なトーンの「まあだだよ」が同じタイミングで帰ってくるのだ。
    
僕は人間に対してかくれんぼをしているのか解らなくなる。
僕の周りにはそんな血の通っていない変人ばかりがいたような気がする。
僕はまだ目をふさいでいる。
「もういいかい?」「まあだだよ
「もういいかい?」「まあだだよ
おもしろくもなんともない、遊びのようでありただの地獄。
鬼になった僕が悪いのだ。誰も鬼になろうとしなかった理由がわかった。
「もういいよ」が聞こえないと何もできないこのルール。
世の中とはそんなものかも知れない。
     
僕はもう一回問いかける。
「もういいかい?」
今度は少し間が開く。沈黙の中、僕は期待に胸を膨らませる。
僕が目を開いたらどういう景色が広がっているのだろう。
瞼の奥の暗闇は暗いようで明るくて、明るいようで暗くて。
色とりどりの花は咲いているのだろうか?
僕の靴底の感覚は薄れていて、
地面が草原だったかコンクリートだったかも定かではない。
すべてが期待と希望に充ちあふれ始めた時に、
まあだだよ
     
僕はまだ暗闇を見続けなければならない。