僕とは対照的な存在、酒。

酒は一生飲まなくともいい、なんて思っている。
ルール無視の話などつまらない。低次元な話だと思っている。
酒の席だと、将棋の「角」がいきなり直進するような話になったりする。
急所をグサリと刺されて、二人目の僕は死んだ。
酒に飲まれて振り回された剣でバッサリ首根っこから切り落とされた。
あっけない最後だった。何も言えずに、形を失った。
あれからどれだけ経ってもあの情景を忘れずにいる。
酒は意味を持たない。全てを消す。麻痺させて痛みを消す。
僕には必要な麻酔のような気さえもする。
でも、もうあの情景を見たくない。身震いする。
全てを受け入れて全てを飲み込む決心。振り返った瞬間、劈(つんざ)く痛み。
もう、いい。