「1Q84」を読み終えた。

flowtime2009-07-01



ここ最近、いろいろあって、そのいろいろがあまり勢いのないものだった。
気持ちは空回りするわ、体力は消耗するわでブログを書く勢いすらありませんでした。
その中でやっとこさ「1Q84」を読み終えたので、その感想を書こうと思います。


いろんな人のレビューを読んでみたんですが、やっぱりいい意見はあまり聞きません。
僕は村上作品はある程度読んできたつもりです。
あまりに健康的な彼の生き方(早起きだったり、マラソンしたり)はあまり好きにはなれなくて、
最近のエッセイは読んではいないけれど、小説は書籍化したものなら全部読んでいます。
1Q84」はそんな彼の作品の中では「読み取りやすい本」の中の一つと呼べると思います。


なぜBOOK1、BOOK2だったのか、上下ではなかったのか。
間違いなく、これは完結していない話だと言うことはおわかりになると思います。
「登場した銃は撃たれるべき」という前提をしながら撃ったという表現はない。
(この表現は面白いことに伊坂幸太朗の「陽気なギャングが地球を回す」にも出てくる)
終わっていない話に感想を書くことはちょっと困ってしまうのですが、
彼の持つ比喩の力には圧倒されました。アニメーションにもし難い比喩。感情的比喩ってやつですね。
海辺のカフカ」の時よりも重圧になっていて、面白かったです。


しかし、いまのところこの作品は代表作ではない、と思います。
確かに男性主人公の情けなさ、女性陣の美しさは村上的だといってもいいです。
こんなに性描写が必要?って言う人もいるんですが、別におかしくないと思います。
天吾(男性主人公)とガールフレンドとの関係がよくわからないという意見もありましたが、
僕にはよくわかります。わかりすぎて胸が痛いぐらいです。
もっと描写してやろうか?ってなくらいわかります。
男性の惰性と女性の積極性があるから、20年前の心の通じ合いを覚えているのです。
でも、これが理解できる人、理解できる環境にある人はなかなかいないのかもしれません。
未婚の30代なら「あ」って言っちゃいますよ。
だからこそ、この作品は代表作ではないのです。
宿命みたいなものを背負って生きるものみたいなことです。
若干青豆(女性主人公)が「おやすみプンプン」に出てくる女の子に似ていると思ったのは僕だけでしょうか。


確かにこれだけ売れてしまえばこの作品を卑下する人も多いよな…とは思います。
この作品は本来はもっとページ数があっても良かったとも思うんです。
もっとバックグラウンドを描くべきだったと思いはするんです。でも間延びするのは間違いないし、
ちょうど良かったのかも知れません。でももう少し、ラストの展開を広げて欲しかったなぁ…。
ふかえりはいいキャラです。村上作品ならではのキャラです。


よく彼の作品を「結婚詐欺」と言う人もいるのですが、
僕から言わせれば「結婚できるとでも思ってたの?」といいたいです。
内容に触れずに感想を言うのは難しいですね。
とにかく文庫本にでもなったら読んでみてはいかがでしょうか。