大阪にて。一、7年前に住んでいたとこ。

僕は大阪に出張している。
今は伊丹空港近くの年期の入ったビジネスホテルにいる。
ベッドのクッションが柔らかすぎて、起き上がるのに苦労する。
こんなホテルはメインの照明がベッドのスタンドぐらいしかないので、
本を読む態勢に苦労する。テレビが異様に小さい。音声もモノラルだ。
       
今日は朝一の飛行機に乗り、モノレールにのって駅に着き、
地下鉄の地下道を通って、門真市の大きな会社に行き、
とても広い構内を歩き、とても大きなビルで講習を受けてきた。

この門真は僕が7年前に住んでいた街だ。
とはいえ、詳しく言えばここは京阪沿線で西三荘。僕が住んでいたのは古川橋。
二駅手前の駅だ。昔住んでいた場所に行ってみたい…とは思ったが、
いい思い出としては残っていない場所に行く必要もないような気がした。
僕が大阪に住むことを止めた場所だ。7年前の僕はそこで大阪にさようならしたのだ。
振り返るのは女の影だけで十分だ。…それも必要のない話であるのだが。

その大きな会社に入るには入社証の作成が必要で、
誰に会いに何処の社屋に行くのかとか、身分を示すものが必要だったりした。
バッグの奥に免許証を入れてしまっていたせいで手間どった。
午前10時半頃の大阪はまだ暑く、焦りと暑さで汗が出た。
ビルの4階に上がると、正面に商談の為のロビーがある。
左と右は認証キーの必要な入口があり、奥はオフィスになっている。
僕はエレベーター前に置かれている内線電話に電話をかける。
使用中のようだ。かからない。オフィスに直接電話をかけてみる。…話し中だ。
内線電話の横には液晶でタッチパネルになっている機器がある。
よく見てみると「何課の誰は今どの状態である」ということがわかる端末のようである。
僕はそれに触らないことにした。ここに誰もいないなら触ってしまうだろうが、
今の段階で5,6人はこのロビーにいる。訳もわからないものに触って
変なことになったら目も当てられない。
うろうろしていると、40代のすらりとした男性が強い癖のある関西弁で話しかけてきた。
僕が望んでいる人間だった。
      
そんなこんなで講習は進む。携帯電話で実地講習を動画録画したせいで電池が無くなる。
特に美味しくもない弁当を食う。時間は流れる。
講習の内容は特に書くことはない。まあ、説明書通りの話だ。
           
講習が終わると僕は前来た道を戻り、今度は地下鉄谷町線に乗った。
とあるところに行くためだ。僕はこのために大阪に来たと言っても過言ではない。
「天国と地獄」を垣間見ようと思ったのだ。
長崎にはない、刺激のありすぎる場所を見たくて僕は違うところへ行くのだ。
地下鉄はどんどん南の方へ進んでいく。長居はするところではない、
しかし「通り過ぎてみたい」と思えた場所に向かった。