ココロの表面温度。

誰かに「どうして生きているの?」と聞かれているような気がする。僕はそれに対して明確な答えを持ってはいない。守るべきものはないし、大切にしているものも特にない。とりあえず「モノを書きたいから」みたいな、ぼんやりとした答えを返すことにした。どうだっていい、漠然とした答えだ。30点の答えだ。そう思った。でも、今の僕にはそれしかない。それでいいのだ。バカボンのパパみたいな自己啓発だ。
誰もいない公園の木陰で猫がうとうとしながら欠伸をしている。僕はそれを横目で見ながら、七月の日差しの中を歩いている。生まれ変わったら、僕はそのような猫になれるだろうか?と、ふと考えたりする。憧れているのだろうか?むしろ達観した存在に見えてくる。庭先の花を見ながら感慨にふけている老人のようだ。僕はそのような時間を過ごせるのだろうか?多分無理なような気がする。多分だけど。
戻れる場所がある人間は恵まれている、と思う。僕はいつしかその場所を通り過ごし、暗い路地裏に入り込んでしまったようだ。笑えない話ばかりが耳に入ってくる。雑然とした風景の路地裏がそこにある。大人になる…みたいな幼稚なものではない。欲望が渦を巻いて作られた異様な空間だ。僕はそれを知らない振りをして生きていくことにしている。でも、不信感は否めない。正しくはない…のだ。でも、それを正すには人殺しになる覚悟が必要だと思う。そうでないと耐えれない。
いかにも時間が止まったかのように思えることがある。しかし、本当は二倍の速さで時間が過ぎていて振り返る余裕がない世界だったことに気がついた。思い出もすぐに色あせてしまう。覚えることより忘れることのほうが多い世界。そして、いつの間にか「個」さえも忘れてしまった。助けてもらいたい、でもその声は届かないのだ。いや、届くと後が面倒になる…そう思ってしまうのだ。時間の流れが全てをマヒしつつある。そんなところにいるような気がするのだ。
少しココロの表面温度が低くなりつつある。それは気がついた、ということではない。よくわからないのだ。不自然で霧の中を歩いているイメージ。手探りで探すしかないのだ、と思っている。